
硝酸態窒素とは、植物が根から吸収する窒素のことです。窒素は、リン・カリウムと並んで三大栄養素とも言われ、植物の生育・生命維持に欠かせない大切な栄養素です。しかし、収穫量を上げようと化学肥料を大量に投入すると問題が起こります。植物は自分の成長に必要な量以上の硝酸態窒素をどんどん吸収し、葉に溜めてしまう性質があるからです。
化学肥料をたくさん使って育てられた野菜と有機野菜とには、見た目に大きな違いがあります。葉野菜だとよく分かるのですが、
化学肥料を使って育った野菜は緑が濃くて有機野菜は薄いのです。一般的には「緑色の濃い野菜の方が栄養価が高い」と思われがちですが、それは大きな間違いです。
化学肥料の成分の一つである窒素を植物が過剰に吸収すると、緑がどんどん濃くなります。この濃い緑はゆでると色落ちしてしまいます。一方、有機野菜の色の薄い方はゆでると緑が鮮やかに、もっときれいになります。
この、化学肥料による硝酸性窒素過剰の野菜はとても不健康です。少し難しい話になりますが、根から吸収した窒素をアミノ酸やタンパク質にするために余分なエネルギーを使ってしまい、作物全体の維持に必要なエネルギーが不足してしまったり、ビタミンなどの肝心な養分の合成にエネルギーが回らなくなってしまうのです。
硝酸態窒素は、通常摂取する程度では特に人体に有害なものではありませんが、ヒトの体内で亜硝酸塩に変化すると、乳児のメトヘモグロビン血症(死にもつながる酸素欠乏状態)を引き起こしたり、強力な発ガン性物質であるニトロソ化合物の生成に関与するおそれがあると指摘されています。
実際に、促成栽培が盛んな地域とガンや糖尿病患者が多い地域には明らかな相関関係があります。
野菜に含まれる硝酸塩は旬に露地で栽培すると一般的に含有量は低く、施設園芸ハウスの中で短期促成栽培すると高濃度の硝酸塩が含まれます。また未成熟の状態で収穫した野菜も多くの硝酸塩を含有します。品目的には葉の野菜に多く含有し、花、果野菜は一般的に低い、根菜は促成的栽培には多く含み、葉枯れ後に収穫する野菜は硝酸塩は含まれないのが普通です。
人間でも栄養価の高いものを食べ過ぎると病気になりますが、野菜も同じですなんです。
赤ちゃんの死亡事故も起きている
硝酸態窒素を体内に取り入れたために、ヨーロッパでは死亡事故も起きています。 WHOによれば第2次大戦後から1986年までに約2000件の中毒事故があり、160人の乳幼児が死亡しています。
裏ごししたホウレン草を離乳食として与えられた赤ん坊が真っ青になり、30分もしないうちに死亡したアメリカの「ブルーベビー事件」は全世界に衝撃を与えました。ヨーロッパでは、これをきっかけに化学肥料に頼らない有機農業が大きく普及しました。
日本では、最近になってようやく国の本格的な調査が始まったばかりですが、EUでは1999年ホウレン草、レタス等の過去5年間の調査結果から農産物に含まれる硝酸態窒素のガイドラインを決定。その結果、冬期のホウレン草で3000mg/kgを超えると「汚染野菜」とされるようになりました。日本人の葉野菜の摂取量は、EUよりも多いにもかかわらずその対応は遅れています。
日本の野菜の硝酸態窒素含有量
これまでに日本の公的機関で測定された野菜の硝酸態窒素の最高値は16000mg/kg(東京都の検査データ、中国野菜のチンゲンサイ)。ホウレン草・小松菜・春菊・チンゲンサイなどの葉野菜の多くは、年中5000〜7000mg/kg前後とEUのガイドラインを大きく上回っています。
いい菜が所属するPOFA(ポラン広場有機農業協会)では硝酸態窒素含有量の測定を定期的に行い、硝酸態窒素を過剰に含まない健康な有機野菜をお届けする努力を続けています。 化学肥料を過剰に使用した施設栽培が最も危険だといわれていますが、有機栽培であって も窒素肥料の使いすぎには十分注意が必要です。
農薬はもちろん硝酸態窒素含有量の低い健康な有機野菜を選ぶことが必要です。単に農薬(合成化学農薬)の使用を減らしたり、使用していない野菜を選ぶだけでは不十分なのです。
すべての野菜を有機野菜で、というわけにはなかなかいかないかも知れませんが、スーパーで野菜を買うときは、できるだけ促成栽培の野菜は避け、旬の路地ものを選ぶようにして下さい。冬にきゅうりやトマトはなくて当たり前なんですから。
自然の恵みである野菜を、人間の都合に合わせて化学肥料とハウスで1年中栽培したり効率化を考えて早く大きく育てることで、結局人間に「病気」という形でしっぺ返しが来るんです。
野菜の都合に合わせて、旬のものをおいしく頂きましょう。
有機野菜(葉菜)
有機野菜(根菜)
有機野菜(その他)